【小説】アサッテの人

【小説】アサッテの人
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【諏訪哲史:著】

群像新人文学賞芥川賞 受賞作品の本作。

恐らく・・・2007年に購入したまま読まずに放置しており、先日実家を整理中に現れたので読みました。
そして・・・多分購入当時に読まなかった理由は、冒頭から文章のクセにつまづいたからであろう・・・。

しょっぱなから「ポンパ」とかいう意味不明な単語が出てきます。
読後はそのポンパに愛情すら感じるのですが、何も知らずに読み始めた時は正直「ポンパてなんやねん(イラッ・・)」としたのでしょう。

内容としては

話し手である主人公の叔父にあたる人物の「アサッテ」な発言・行動を、主人公本人の記憶・叔父の妻に聞いた話や叔父の残した日記を元に、手記という形で綴られています。
手記のきっかけは、妻を亡くした後に引っ越した先から失踪した叔父。そこに残された叔父の日記。かつて主人公の実家で同居していた過去もあり、失踪以前から、突然意味不明な言葉を発したりするキャラの強い叔父に対して小説のネタにしようと思っていた主人公だったが・・・

帯に書かれていた説明で「叔父の”喜劇的にして悲劇的”な生の感触が・・・」というものがありましたが、まさにそのものです。

叔父の「アサッテ」を理解するまでは、読んでいてなかなか辛いものがあるのですが、途中から面白かった〜!
とっとと読めばよかった!

叔父のキャラがなかなか濃くて、それに影響される話し手(主人公)。しかしながら話し手は叔父を離れたところから俯瞰し、冷静にありのままを記述したいというジレンマを抱えている様子も面白い。

感想など

※以下ネタバレ等ありますのでご注意ください
※感想なので好き勝手に述べているので、不快な表現があるかもしれません。
※大層な乱文ですがご容赦ください。

いわゆるメタフィクションで、私は正直、途中から作者本人の実話だと思いながら最後まで読み進んでいました。
※メタフィクション = フィクションをノンフィクションと見立てたフィクション(詳しくは検索してください(投げやり))

まるで実際に、作者の叔父について作者自身が語っているような記述です。

うーん。wikipediaで作者の事を垣間見た限りでは、自分自身のこともこの小説に投影してるのかな。なんて思ってしまったりもします。しかしそれはただの想像です。

とにかく、くどいようですが冒頭部分の「ポンパ」から感じたのが
そうやって序盤で不思議な単語入れといたら奇を衒った新しい感じがするとでも思ったのか!

というのは読書経験少ない私の傲慢な思い込みで、結論はとても面白かったです。

ちなみに【妻の朋子さんの手記】という形をとった章あたりから面白いです。

話し手の、叔父や妻の朋子さんに対する愛が伝わってきます。

叔父が「アサッテ」に固執し始めるあたりもかなり面白いです。ヒトって奴は紙一重やな〜なんて思います。
大抵の人は理性を保って、その理性ってのは結局社会から外れた行動を取らないことであって
社会から外れた行動を取ることは恥ずかしいものとして世の中は定義付けていて・・・

最後の方の叔父のアサッテの爆発っぷりは読んでて滑稽だけれど、全然理解できないものでもないな〜とか。

「吃音(きつおん)」に苦しんでいた叔父が、ある日突然吃音との別れが来ることで、・・・・という
キッカケが吃音。吃音との別れがトリガー。みたいなことも思いますが、そうでもなさそうなんだな〜。

面白いなって思った表現・・・説明が、
「定形外」を好む叔父は、自由律詩よりも「字余り・字足らず」の違和感を好んだ。

「アサッテ」に傾倒しはじめる叔父の性格の説明にピッタリだと思う。

更に「自覚」するまでは自然的なものであったアサッテが、人為的なアサッテになっていってしまい、それに苦悩する叔父・・・。

なんやこの話。ってなるけど面白かった〜。もう一度読もう。